October 25, 2005

Raul Midon: From Donny To Stevie To Raul

【ダニー、スティーヴィーからラウルへ】

継承。

音楽CDの裏ジャケットで曲目を見ると、ゲストに「ハーモニカ・スティーヴィー・ワンダー」の名前がある。そして、その次の曲は「ダニー・ハザウェイに捧げる」とある。この2行だけで買いだろう。声にスティーヴィーとダニーが宿る驚異の新人、ラウル・ミドンがデビュー作『ステイト・オブ・マインド』を出してプロモーションで来日。

会場の代官山ユニットは、超牛詰。入口からなかなか前に進めない。しかたないので、テレビモニターを見た。ラウル・ミドンの本人名義の初ショーケースライヴ。全8曲約40分、本人だけのオンステージ。見事です。

何よりも、声が素晴らしい。そして、ギター・テクニックが素晴らしい。声色使いが素晴らしい。途中でトランペット風の音を口で出したり、さらにスキャットでギターの演奏とあわせたり、歌、トランペット、ギターとひとり3役をいとも簡単にこなす。全曲、デビュー・アルバムからの作品ばかり。はやく90分のフルショウが見たい。

スティーヴィーとの共演について彼はステージでこう解説した。「あるとき、ソーホーのバーでプロデューサーのアリフ・マーディンと飲んでいたんだ。僕のデビューアルバムには、いろんな人が来てくれた。そこで、僕がふと、『アリフ、スティーヴィーは呼べないかな』とつぶやいたんだ。そうしたら、彼はすぐに携帯からスティーヴィーに電話をして、『スティーヴィー、これこれしかじかで~~』と話をしてくれた。そして、アルバム全体をマスタリングに渡す直前、1本の電話がかかってきた。『ラウル、早く、スタジオに飛んで来い! 今、スティーヴィーがLAのスタジオで録音準備万端になってるぞ』ってね。そして、両海岸に分かれて録音したんだ。今日は、スティーヴィーに代わってスティーヴィーのところもやります」 そして、CDではスティーヴィーのハーモニカが聞かれる「エクスプレッションズ・オブ・ラヴ」を披露した。これは、本当にスティーヴィー節だ。

約40分のライヴ終了後、ご挨拶。少しだけだが、話す機会があった。最初誕生日を聞いたら「3月14日」との答え。あれ、確かアリフ・マーディンの誕生日ってそのあたりでは? と返すと、「アリフは15日で、14日はクインシー・ジョーンズだよ」との答え。そうだった! ということは、ラルフはクインシーと同じ誕生日! わお! 「で、何年ですか」と尋ねると、「さあ、まあ、ネットとか見ればわかるよ」との答え。そうかあ、年齢不詳か。で、一生懸命ネットで探してるのだが、まだでてこない。(笑) 

関係者にちらりと聞くと誰も知らないのだが、38歳くらいらしいという。それを聞いてまたびっくり。20代半ばあたりと思っていたからだ。38歳だと1967年生まれくらいか。そこで、「初めて買ったレコードはなんですか」と尋ねると、「初めて買ったレコード? う~ん、思い出した! 聞いてくれ! スティーヴ・ミラーの『フライ・ライク・ア・イーグル』だよ」 な~るほど。これは75年のヒットです。もし仮に10歳で買っていたとすると65年生まれ。でもよく考えると、ダニー・ハザウェイ、スティーヴィー・ワンダーあたりが好きということは、60年代前半でもおかしくない。「ニュー・メキシコのキャンディマン(レコード店の名前)で買ったんだ!」 

年齢はさておき、たくさんの人が挨拶するために並んでいるのでもうひとつだけ質問を。「映画『レイ』は見ましたか?」 「オ~・イエー、もちろん! あの映画の中で、レイが騙されるシーンがあるだろう。(ギャラをレイが見えないと思い、1ドル札を高額紙幣のごとく数えるシーンのこと) ああいうことがあったのかと思って心が痛んだ。僕は直接ああいうことはなかったけど、ライヴハウスの人間から『ライヴをしないと訴えるぞ』というような脅しを受けたことがあった。『ライヴをしないと、レコード契約なんかぶち壊してやる』とかね。だから、ああいう映画を見ると勉強になるね」

「あの映画の中で、レイが美人を見極めるシーンがあったでしょう。ラウル、あなたはどのようにして、美人を見極めるのですか?」 「ははは、素晴らしい女性(Beautiful lady)は、外見じゃないよ。知性があって、話ができて、愛があれば、そういう女性が美しい人だよ。そう、知性や話し方、どのように話すか、そういうところに惹かれるかな」 

ラウルは今年の6月全米デビュー前の4月に、ニューヨークのライヴ・ハウス、ビターエンドのステージに立った。ダニー・ハザウェイの歴史的名盤『ライヴ』が1972年にレコーディングされた地である。ビターエンドのソウルは、ダニーからラウルへ継承されている。

彼には双子の兄弟がいる。そして、その彼もラウル同様未熟児で生まれたため保育器に入れられ酸素過多で失明した。彼らが子供の頃、黒人の母が亡くなり、アルゼンチン系白人の父親に育てられた。だが、その兄弟も現在はNASAでエンジニアとして働いているという。十代の頃、苦労はしたがその頃の苦労した経験を自身のデビュー作に昇華した。この双子にとって盲目はもはやハンディーではない。

ラウル・ミドン、リアル・ミュージック・バイ・リアル・ミュージシャン! 

Setlist

show started 19:41
1. Everybody
2. Sunshine (I Can Fly)
3. If Your Gonna Leave
4. All In You Mind
5. Sittin' In The Middle (Dedicated To Donny Hathaway)
6. Waited All My Life
7. Expressions of Love
8. State of Mind
show ended 20:25

(2005年10月24日月曜、代官山ユニット=ラウル・ミドン・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Midon, Raul

投稿者 吉岡正晴 : October 25, 2005 04:28 AM
コメント