November 06, 2005

Stevie Wonder Press Conference (Part 1):

【スティーヴィー記者会見・全訳・パート1】 

会見。 

音楽東京に2005年10月31日から11月5日まで新作『ア・タイム・トゥ・ラヴ』のプロモーションのために滞在していたスティーヴィー・ワンダーは、11月2日(水曜)に恵比寿のウェスティン・ホテルで記者会見を開いた。質疑応答は約60分に及んだが、その全訳を3回に分けてご紹介する。質問は、事前に抽選で選ばれた記者、DJなどが順番に行い、スティーヴィーは計8人の質問に答えた。なお、ここでは記者会見でなされた訳に、手直ししてある。 

スティーヴィーは、アイーシャに手を引かれながら、ステージに登場。中央にソファがあり、その前にはキーボードが置かれている。最初の数分はスチールのカメラマン用にポーズをとっての写真撮影。それが終ってから、質疑応答が始まった。 

司会者: まずは一言お願いします。 

スティーヴィー・ワンダー(以下SW) コニチワ(笑)。日本に戻ってこれて大変、嬉しく光栄に思ってます。僕は、日本が大好きで、第2の故郷という風に思っています。この世にもし輪廻転生があるとしたら、僕はきっと昔は日本人だったのではないか、そんな気さえします。それくらい、日本の人たちとは共通点を感じますし、すごく日本を近くに感じるのです。日本以外に、これほど近くに感じる国はアフリカで、それくらい僕にとって日本は重要なんですが、個人的に本当にまた日本に来られて嬉しいと思ってます。 

質問1 (ステーヴィーにとって)グラミー賞はどのようなものですか? また、2006年のグラミー賞にも、今回の素晴らしいアルバムが必ず受賞されると思いますが、どのようにお考えですか?(質問者・ワウワウ=WOWOW) 

SW グラミー賞にはクラシック、ジャズ、ヒップ・ホップ、リズム&ブルース、ポップス、カントリー、ゴスペルと多くの部門があって、そういった様々な分野で活躍したアーティストたちを紹介するといった意味でも、素晴らしい賞だと思う。(グラミー賞は)まわりの人たちが、それぞれのアーティストが成し遂げた作品をどのように聴いているかという一つの意見でもあるので、とてもいいものだと思っています。僕自身の作品がこれまで(グラミーを)受賞していることにはとても感謝しています。次のグラミー賞を、自分が受賞するかということですが、(アルバムには)非常にいい反響があってとても嬉しく思ってますが、現時点ではまだまだグラミー賞を取るまでには、十分な記者会見をやってないかな、と感じています。(笑) 

偉大な故ヘンリー・マンシーニさん(アメリカの映画音楽家)と、以前お話する機会がありました。僕自身、グラミー賞を19回獲得していますが、ヘンリー・マンシーニさんはそれを上回って30回以上受賞しています。彼とグラミー賞の話をいろいろしていたら、彼から「(君は)まだまだいけるよ!」と言われたので、僕も「まだまだこれからいけるな」と感じて、彼の記録に追いつこうと思ってます。彼のようにこれだけ多くのグラミー賞を受賞できたことに大変感謝してます。また、彼と同じくらい多くのグラミー賞を受賞しているクインシー・ジョーンズ(米ポピュラー音楽界の巨匠)さんらと並んで、(自分が)語られることも大変光栄に思います。 

ただ、僕自身は、グラミー賞を受賞すること自体はあまり重要視してません。それほど大事だとは思ってないのです。それよりも、人々が僕自身の音楽を、僕の主張をちゃんと理解してくれている、僕が書いた歌詞、メロディー、そういったものをちゃんと理解してくれているということが、また、自分が書いた曲が人々を勇気付けたりしていることのほうがとても大事なのです。そういう光栄なことが、(結果的に)これだけのグラミー賞をもたらしてくれ、(僕の音楽の素晴らしさを)証明してくれるものであって、それは神から僕に与えられたものだと思います。神の恵みといえば、今、隣にいるアイーシャを紹介したいと思います。(一瞬、「イズント・シー・ラヴリー=可愛いアイシャ」のフレーズを弾く) 

質問2 今回のアルバムの中の「シェルター・イン・ザ・レイン」という曲は、ハリケーン・カトリーナの被災者に捧げられた曲ですが、チャリティー・ソングにもなっているとお聞きしました。この曲が、チャリティー・ソングになったいきさつを教えていただけますでしょうか?(質問者:ライター・内田真紀子氏) 

SW この「シェルター・イン・ザ・レイン」は、僕が約4年前に書いた曲です。これは僕が人生の中で一番辛い時期に生まれた曲なのです。ちょうど弟のラリーの病気が末期だということを聞かされた時期でした。そのことを聞く1年前にも僕の最初の妻シリータとこんなことがありました。ちょうどマンデラ大統領(南アフリカ大統領)の娘さんからシリータに連絡が入り、マンデラ大統領の誕生日を祝うために(僕に)来てくれないかと依頼がありました。僕はシリータに『君は僕と一緒に曲をたくさん書いてるんだから、君も一緒においでよ』と言いました。彼女とは、たとえば『イフ・ユー・リリー・ラヴ・ミー』(ワンフレーズ歌う)を共作したり、彼女自身はビリー・プレストンとデュエットで『ウィズ・ユー・ボーン・アゲイン』(少し歌う)を歌ったりしています。 

それはさておき、彼女と一緒に南アフリカに行きました。その時にシリータが自分の胸にしこりがあるということを告白してきました。彼女はとても不安に感じていて、僕がどう思ってるのか意見を尋ねてきました。僕はカリフォルニアに戻ったらすぐに医者に見てもらうべきだと話しました。でも、彼女はとても(医者に行くのを)怖がっていて、『一緒に行ってくれる?』というので、『もちろん一緒についていってあげるよ』と答えました。そして、カリフォルニアに戻って一緒に(医者のところに)行ったのですが、残念なことにその腫瘍はひじょうに悪性のものでした。そして、彼女は2年前に亡くなってしまったのです。(訳注、実際シリータが他界したのは、2004年7月、1年前のこと。スティーヴィーがちょっと勘違いした)  

その時は本当に心が痛み、悲しみにくれました。当時は、シリータとはもう離婚していましたが、(シリータは、自分の)家族のようなもので、彼女の子供も僕の子供も同じようにファミリーだったんです。ラリーもシリータも、僕の大事な家族で、その家族を失ったという痛みをそのときもの凄く感じていたのです。そんなときに神が試練を乗り越えさせてくれるべく力をくれ、授かったのが「シェルター・イン・ザ・レイン」という曲でした。当初はシリータと一緒に歌おうと思っていたのですが、彼女はとても歌える状態ではありませんでした。結局僕ひとりで歌ったのですが、この歌を歌うことによって、僕はその苦しい時期を乗り越えられたような気がしたのです。そこで、ハリケーン・カトリーナの被災者の人たちとともに、僕が神から授かったこの曲の何かを一緒に分かち合えればいいのではないかと思うようになりました。そして(自分が所属する)ユニバーサル・レコード、モータウン・レコードと話し合い、この作品をシングル・リリースして、そこから上がる純益をすべてハリケーン・カトリーナの被災者たちに寄付することにしました。 

質問3 スティーヴィーがデビューした1961年から、ニュー・アルバム『タイム・トゥ・ラヴ』まで、ずっとスティーヴィーの音楽を楽しませていただいています。一番最初に曲を書いてから今まで、作曲においてもっとも大切にしていることは何でしょうか? それは、デビューした時から、今回のアルバムまで同じなのか?それとも、各60年代、70年代、80年代、時代を見て書いてらっしゃるんでしょうか?(Jウェイヴ リュー氏) 

SW まず、何よりも僕は音楽愛好家(ミュージック・ラヴァー)であるので、音楽が大好きなんです。ですから、曲は様々な理由で書きます。自分自身のことを表現するために、あるいは曲を書く手段を持たない人の意見や言いたいことを代弁するために、あるいは何か伝えたいことがあるために曲を書きます。こういうことができるということを自分ではとても光栄だと思っています。僕が曲を書く理由は様々です。その曲に向かうフィーリングとか、そこで何が起こっているか、なんでも書きます。どういう気持ちを込めて書いているのかは、曲によって違いますが、一番重要なことは、書いたものをまた聴き直して、それを客観的に聴くことだと感じています。 

曲を書いて完成させたら、音楽好き(ミュージック・ラヴァー)としては、一度スティーヴィー・ワンダーの外側から客観的に聴いて、もし気に入らなければそれはリリースしません。それを聞いていいなと思えば、出す、ということです。作曲してて、長年すごく大事だと思うのは、僕自身がその曲を聴いて一緒に歌えるかどうかということです。一緒に歌えるかどうかということは、その曲がいいメロディーを持っているか、ちゃんと(ストーリーが)成り立っている歌詞ができているか、仮に馬鹿げだ内容の歌詞でもそれなりにつじつまがあっているか、真剣で真面目な歌がメイクセンス(理に適っている)しているか、スピリチュアルな曲でもきちんと歌詞の整合性があるかどうか、そういうことが大事なんです。自分なりのそうした基準が満たされれば、それは世にでます。 

僕自身は(シンガー・ソングライターであると同時に)常にプロデューサーでもあって、プロデューサーとして客観的に音作りを見ていかなければなりません。僕としては、スティーヴィー・ワンダーというアーティストを客観的に自分の耳で聴いて、「このヴォーカルはちょっと気に入らないなあ。これはもっとうまく聴こえるんじゃないか?」とか「その歌い方は、彼(スティーヴィー)が(曲の)意味するところをうまく歌っていないんじゃないか」「これは必要ないんじゃないか?」「もっとよくできるんじゃないか?」などと見ます。プロデューサー、ソングライター、そういった観点から僕自身は曲を書きます。 

もうひとつ付け加えたいのは、僕は音楽愛好家なのでありとあらゆる音楽を聴いています。それはヒップ・ホップからクラシックから、ありとあらゆるものです。いろいろな意味で、そういった曲からインスピレーションを受けたり、影響を受けたり、それらを自分なりの方法で消化して自分の作品を作っています。 

(スティーヴィー・ワンダー記者会見=パート2へ続く) 

(2005年11月2日水曜、恵比寿ウェスティン・ホテル、スティーヴィー・ワンダー記者会見) 

ENT>MUSIC>ARTIST>Wonder, Stevie

投稿者 吉岡正晴 : November 6, 2005 06:11 AM
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