November 19, 2005Groove Hand, Poet Hand: Magic Hand Of Joe Sample (Part 1)【ピアノの魔術師、ジョー・サンプル完全ソロライヴ】 旅先案内人。 なんとイマジネーションを広げてくれるパフォーマーだろうか。たったひとりでステージに置かれたグランドピアノに向かい、たった2本の腕と10本の指で88の鍵盤を操り、200人ほどの聴衆の心をわしづかみにする。そのピアノの音色に身を委ねれば、世界中のどこにでも、いつの時代にでも瞬時に連れて行ってくれる。それはあたかも、このピアニストがすばらしき旅先案内人の如くだ。 ピアノの魔術師、ジョー・サンプルの完全なソロ・コンサート。2年程前にやはりここモーション・ブルーでソロ・ライヴを見たが、それ以来。バンドではなく、完全なソロというのは、緊張感もあり、しかも、自由度が圧倒的に高いために、ひじょうにおもしろい。アーティストの調子によって、出来不出来が如実に表れたり、セットリストが決まっていない分、思いもかけない曲が弾かれたりすることもある。まさにこの日のこの瞬間しか存在しない真の一期一会だ。85分間のパフォーマンスは、この空間に来た人だけの経験だ。そして、その経験をどのように評価するか、どれほど価値あるものと思えるかは、参加してその演奏を聴いた本人次第ということになる。 1曲終えるとタオルで額の汗を拭い、力強く、そして、さらに強烈なタッチで鍵盤を打つかと思えば、ぐっと引いてゆるいタッチで触れる。こんな緩急を付けられるピアニストを他に知らない。 ミスター・サンプルは何曲かに解説をつけて、プレイする。例えばこうだ。「ジョージ・ガーシュインが7歳の時、親に連れられてニューヨークのハーレムに行ってそこでプレイしているピアニストたちを見ていた。そして、彼はその(黒人の)ピアニストたちを見て、曲を書こうと思った。彼らには、リズム(感)があったのだ。自分もそういうリズムが欲しいと思った。そして、彼はそのものずばりの曲を書いたのだ。『アイヴ・ガット・リズム』」 「ジョージ・ガーシュインが7歳頃というと、ちょうど第一次世界大戦の頃だろう。1912年ころかな、ハーレムではいわゆる『ストライド・ピアノ』という奏法が大流行だった。その達人がジェームス・T・ジョンソンという人物だ。では、みなさんを1918年のハーレムにお連れすることにしよう」 こうして演奏されたのが、「キャロライナ・シャウト」。 「その昔、ピアニストがもっとも好きな音楽はブルーズだった。酒場で酒を飲めないことがあった。隠れて飲まなければならなかった。そんな酒場ではピアニストは、ブルーズ・ピアノを静かに弾かなければならなかった。おまわりがやってくるからね。ピアノも静かに、話もひそひそ話でね。だから、今夜私もピアノをそっと弾くことにする。『アフター・アワーズ』という曲です」 それは、ジョー・サンプル教授のピアノの歴史のレッスン。時間軸と地域の軸が縦横に行き来して、我々を未知の世界にいざなう。 セカンドセットでひときわ驚いたのは、ジョーとレイラがレコーディングした傑作『ソング・リヴズ・オン』からの「ホエン・ユア・ライフ・ワズ・ロウ」だった。これはオリジナルであり、レイラの名唱で決定的になったヴォーカルソングだ。他の誰もが知ってるスタンダードとはちょっと意味が違う。あれだけ強烈な歌の印象を持っていた曲だが、ジョーのたったひとりのソロピアノで、この曲が持つ世界が創られた。 もうひとつは、ファーストでもやったジョーの18番「メロディーズ・オブ・ラヴ」。最初の2-3の音でそれとわかったが、ファーストとはまったく違ったアレンジで、まるで別の曲のようだった。ここまで違う「メロディーズ・オブ・ラヴ」をあっさり弾けてしまうなんて。おそれいった。 それにしても、アップテンポの時のグルーヴ感といったらない。そして、バラードの時のメロディアスな魅力。ジョー・サンプルの左手はグルーヴを生む手。そして、右手は詩を語る手。グルーヴ・ハンド、ポエット・ハンド、それらはマジック・ハンド。 (ジョー・サンプルについては続きます) Setlist (2nd) show started 21:35 01. Paper Moon ■ジョー・サンプル関連記事 2004/08/29 (Sun) 2004/05/07 (Fri) 2004/05/05 (Wed) ジョー・サンプル・ライヴ 「引き算のピアノ」 2003年12月 クルセイダーズ・ライヴ 「ウォーリッツァーの初体験」 2003年10月 ジョー・サンプル・ライヴ 「宇宙のように大きな背中」 2002年4月 ジョー・サンプル&レイラ・ハザウエイ・ライヴ 「魔術師の指」 1999年6月 ブルーノートウェッブ (2005年11月18日金曜、横浜モーションブルー=ジョー・サンプル・ライヴ) コメント
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