October 11, 2007

Movie "La Vie En Rose"

(映画のねたばれがあります。これからご覧になる方はご注意ください)

【映画『エディット・ピアフ~愛の賛歌』を見て】

余地。

次の「山野ミュージック・ジャム」(10月14日放送分)でエディット・ピアフの映画『エディット・ピアフ~愛の賛歌』を紹介することになり、現在公開中のその映画を見てきた。これは1950年代から1960年代にかけて世界中で人気を集めたシャンソン・シンガー、エディット・ピアフの生涯を描いたもの。ピアフは日本でも大変人気の高いシンガーだ。

ピアフは、1915年(大正4年)12月19日パリ生まれ。3歳の頃から祖母の娼婦の館で過ごすという劣悪な環境に育った。20歳の頃、クラブオーナーに認められ、その店で歌いだしたところ人気が出始めた。その後、さまざまな人生の紆余曲折があり、スターの座にのぼりつめる。麻薬中毒、激しい性格、恋、周囲で起こる不幸などなど、多くの出来事がピアフを悩ます。

さすが、ピアフの映画だけあって、映画館に来ている人たちはかなり年齢層が高かった。以降は見ての感想なので、これからご覧になる方は、ご注意ください。

主演ピアフ役のマリオン・コティヤールの演技が見事だ。麻薬中毒患者でわがままで周囲を困らせるピアフの性格をうまく演じている。特にマリオンが演じる晩年は、46歳、47歳とは思えぬ、もう60-70歳の老婆かと思わせられるほど。そして、それを31歳ほどのマリオンが演じているというのもすごい。(マリオンは1975年9月30日生まれ。撮影時は31歳) ピアフ役は5歳までの子役と、10歳までの子役、そして、マリオンと3人が演じるが、子役たちもかわいい。

しかし、映画全編の編集が、あまりに時系列が交錯するので、僕にはわかりづらかった。なんで、こんなにごちゃごちゃにするのだろう。僕はピアフの人生そのものが劇的なので、それを正確に時系列に沿っていけば、それだけで感動できるものができると思うが、どうも映画人というのは、さらにそれだけでは物足りなくなり、なにかひとひねりしてみたくなってしまうのだろう。重要なポイントは、素材がよければよいほど、小細工するな、ということだ。単純に「かわいそう」とか「幸せそう」といった見てる側の感情起伏が、あちこちで寸断される。

たとえば、冒頭で死の淵を出し、そこからフラッシュバックで3歳の頃に戻し、徐々に時系列に沿って物語を展開し、ところどころに、その時点よりも前のことをフラッシュバックでいれる、というシンプルな構成にしたら、もっと最後盛り上がると思う。なので、DVDが出たら、すべてきっちり時系列を正したヴァージョンでも自分で編集して見てみたいとさえ思った。

映像に関して言うと、全編パリの、そして、ピアフのどんよりとした陰鬱なイメージをうまく撮影していると思う。一方、一部でカリフォルニアに行ったときのシーンがでてくるが、ここでの映像が太陽と空があまりに対照的に明るくなっていて、その映像のコントラストに、ピアフの光と影が重なった気がする。撮影監督は永田鉄男さんというパリ在住の日本人だそうだ。

ピアフの人生は、まさにソウル・サーチンの連続だった。そうした苦悩と成功の喜び、光と影を、これでもそこそこは描けているとは思うが、もっと脚本に書き込めるような気がした。なぜ自分は麻薬に溺れるのか、なぜ自分の周りには不幸が起こるのか、なぜ彼女は孤独を嫌うのか・・・。僕はこの映画でしかピアフのことは知らないが、ある意味凝縮されたこの映画の中からでもそれだけのテーマが拾える。おそらく2時間余で47年間は難しいのだろう。それでも、たぶんクリエイティヴに更なる高みに上げられる「余地」があるような気がした映画だった。やはり、消化不良感はぬぐえない。

エディット・ピアフは、1963年10月11日、リヴィエラで死去。47歳だった。つまり今日が命日である。

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■「山野ミュージック・ジャム」(毎週日曜・16時30分~16時50分、インターFM76.1mhz『ソウル・ブレンズ』内)

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投稿者 吉岡正晴 : October 11, 2007 01:43 AM
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