March 11, 2008

Movie “My Blueberry Nights”: Elizabeth’s Soul Searchin Story

(若干ネタばれがありますが、お読みになってから映画をごらんになると理解の手助けになるかもしれません)

【映画『マイ・ブルーベリー・ナイツ』】

ブルーベリー。

オープニングからニューヨークの夜景にノラ・ジョーンズの「ザ・ストーリー」が流れる。ウォン・カーウァイ監督初英語作品、ノラ・ジョーンズ初映画主演作『マイ・ブルーベリー・ナイツ』。

主人公はニューヨークに住む女性エリザベス(ノラ・ジョーンズ)。ちょうど彼氏に新しい彼女ができて振られてしまった。近くのカフェに出入りするようになった彼女は、その失恋の思いを断ち切るために、旅に出る。旅先から彼女はそのカフェのオウナー、ジェレミー(ジュード・ロウ)に絵葉書を送り始める。彼女が立ち寄ったメンフィスとラスヴェガスで、同じく「別れ」を体験した女たちと出会う。5603マイルにおよぶ旅の結果、彼女が思い始めたことは…。

全体的なトーンは、エリザベスが旅をして、そこでいくつかの出会いと別れを体験する、一種のロードムーヴィー的なものだ。しかし監督は、これはロードムーヴィーではないという。人物設定、状況設定がなかなかいいと思う。大きく分けてニューヨーク、メンフィス、ラスヴェガスでの物語が語られる。

いつまでもキープされている家の鍵、その鍵すべてに物語がある。必ず売れ残るブルーベリー・パイ、アルコール中毒の男、その元妻、父親と断絶し人を信じないギャンブラーの娘…。そして、いつ来るかもわからぬ絵葉書を待ち続けるカフェのオウナー。それぞれの悩みと心の葛藤が淡々と描かれる。

僕は個人的にはメンフィスの行き詰っているアルコール中毒の警察官とその年の離れた若い元妻の夫婦の物語がよかった。そのすれ違いぶりと、男のダメさ加減に心を打たれた。どうしようも解決策がなく、行き場もなく、どんどんと泥沼にはまっていくそのせつなさがよく描けている。アルコール中毒の警察官を演じるのはデイヴィッド・ストラザーン、その元妻役はレイチェル・ワイズだ。それに比べるとラスヴェガスでのギャンブラーの娘(ナタリー・ポートマン)の物語は、ナタリーがいい味をだしていただけに、脚本次第でもう少し深みを付けられたと思う。

全体的にけだるい空気を演出しているが、流れる音楽もまったりして映像に完璧にフィットしている。逆に、そこからぱっと浮き上がる楽曲もある。オーティス・レディングの「トライ・ア・リトル・テンダーネス」などは、メンフィスのシーンで流れるが、実にいい形で使われた。そこに、ルース・ブラウンの「ルッキング・バック」が交互に流れ、実に印象深い。

その後、サントラを聴きながら、じっくり訳詩を読んでいたら、あることに気が付いた。実はこの「トライ…」は警察官の、そして「ルッキング・バック」がその妻の心情を歌った歌なのだ。2人のシーンで何度か使われる。

「トライ…」は、オーティスが歌う実に物悲しい作品。「彼女は落ち込んでいるかもしれない。若い子たちはみな落ち込むものだ。だが女の子が落ち込んでいたら、ひとかけらのやさしさをプレゼントするといい」と歌う。妻が出て行ってしまっている情けない男の心情とオーティスの悲しげな歌声が見事に重なる。彼は妻と会うとすぐに言い争いになってしまい、やさしい言葉をかけられない。

一方、「ルッキング・バック」はその年上の夫に愛想をつかしている妻の「テーマ」的曲。「この人生を振り返れば、あなたを苦しめたことを思い出す。でも、もう決して同じ過ちは犯さない。過去を振り返れば、愛が憎しみに変わったことを思い出す」 映画ではこれらの曲の訳詩字幕がでてこないのだが、ふたりの気持ちと楽曲がどんぴしゃなので、そのあたりを意識してごらんになると、それらのシーンをより深く楽しめると思う。

エリザベス(ノラ・ジョーンズ)は、自分探しに出たのだが、もちろんそれは別の言葉で言えば彼女のソウル・サーチンの旅でもあった。ノラの演技だが、この映画にはひじょうにフィットしたキャラクターを無難に演じた。初映画作品として十分だろう。彼女をこの主役にもってきたウォン・カーウァイ監督の手腕ともいえる。こういう役柄に彼女がぴったりという感じだ。アカデミーにノミネートされることはないと思うが。(笑)

おそらくこの映画を見たら、サントラが欲しくなるだろう。そして、サントラを聴きこんで訳詩などを頭にいれてから映画を見るのもいい。映画全体のトーンを「せつない」という言葉でまとめるとすれば、このサントラの音もせつなくていい。そして、「せつない」を求める人にはうってつけの作品だ。あと、ルイ・ヴィトンとのタイアップが超強力!(笑)

マイ・ブルーベリー・ナイツ オリジナル・サウンドトラック
サントラ カサンドラ・ウィルソン ハロー・ストレンシャー キャット・パワー ノラ・ジョーンズ オーティス・レディング ルース・ブラウン ライ・クーダー メイヴィス・ステイプルズ グスタヴォ・サンタオラージャ
EMI MUSIC JAPAN(TO)(M) (2008/02/14)
売り上げランキング: 926

映画オフィシャルサイト 2008年3月22日(土)から全国ロードショウ
http://www.blueberry-movie.com/

余談だが、実はこの映画を見ていて、かつてこのブログで書いた「シリー・ラヴ・レターズ」という物語を思い出した。

August 15, 2006
Silly Love Letters: Postcards Of Summer of 87 (Part 1 of 2 Parts)
http://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200608/2006_08_15.html

August 16, 2006
Silly Love Letters: Postcards Of Summer of 87 (Part 2 of 2 Parts)
http://blog.soulsearchin.com/archives/2006_08_16.html

そして、この物語を映画化するなら、ウォン・カーウァイに頼みたいと思った。やってくれるかなあ。(笑)

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投稿者 吉岡正晴 : March 11, 2008 03:41 AM
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