January 12, 2006

Kunimoto Takeharu (Part 2): New Wave Of Roukyoku: Trying To Find Soul Of Shamisen

【浪曲のニューウエイヴ~国本武春さん(パート2)】 

ニューウエイヴ。

音楽こんなおもしろい芸をやってくれた人に話を聞かないわけにいかない。とりあえず、もろもろ終ってからいろいろお話を聞いた。武春さんは、1960年11月1日千葉生まれ。高校までにフラットマンドリンなどを演奏。その後、民謡ブームが巻き起こった80年代に三味線をやるようになった。両親が浪曲や三味線をやっていたことから、比較的子供の頃から見ていたが、このころから徐々に真剣に勉強するようになった。とは言っても、こうした三味線は師匠の元でいろいろやるものの、基本的には独学。

いわゆる寄席演芸に興味を持ち、浪曲の師匠に弟子入りするが、その頃も今も、浪曲の道に進もうなどと思う人はめったにいない。武春さんはその師匠にとって15年ぶりの弟子だったそうだ。そして、武春さんの次に弟子が入るのはその10年後だそうで、言ってみれば25年で2人くらいしか弟子がこないというひじょうに珍しい世界だ。それを聞いて、「じゃあ、武春さんは、10年にひとりの逸材ですね!」というと、「ま、他にいませんから(笑)」。

武春さんによれば、ざっくり言うと浪曲の歴史は150年、落語は300年、講談は500年だそうで、講談、落語家などからは、ちょっと見下ろされる感じの位置にいるそうだ。「しかし、浪曲は何でもありで、しかも、やるたびに毎回違う」というそのアドリブ性が大衆から大変支持された。おもしろいことに、落語、浪曲、講談はそれぞれひとつの派閥であり、この三者は原則的に同じ舞台には立たないそうだ。

「基本的には、浪曲でやる三味線はワンコードです。僕はB♭(フラット)です。最初から最後までB♭。その中で何でもできますよ」「今日は、三味線と『うなり(歌うこと)』をひとりでやりましたが、古典をやる時は僕はうなりで、別に三味線をやる人がいます。もちろん、うまい三味線の人と一緒にやれば、うなる方ものってきて、うまくアドリブができたりします」 

ワンコードで最後まで押し切るところなどは、ブルースや一部のソウルの楽曲と同じだ。ジェームス・ブラウンのワンコード・ファンクと三味線のワンコード音楽の共通点はいかに。ルーツ的な音楽は、その一番下の根っ子のところ、どこか地球の奥深くの地下水脈でつながっているものである。アメリカ南部のブルースと日本の浪曲も、案外地球の下のほうでつながっているのかもしれない。

彼のアップテンポの曲にグルーヴ感を感じて驚いた僕はその秘密が知りたかった。「多分、僕がブルーグラスやブルースなど洋楽を聴いていたから、ユニークな三味線が弾けるようになったのかもしれません」 確かにその通りだ。三味線でグルーヴを出せるかというテーマは、結局は演奏者の体内にグルーヴ感があるかどうかにかかってくるということの証明だ。

このパーティーに武春さんを招いたオウナーシェフの田辺さんは「彼のようなプロの仕事を見るとね、本当に勉強になるんですよ。僕の仕事にもヒントになるしね。こう究極でしょう。突き詰めてる。料理も突き詰めることがね、大事でね」と言う。田辺さんと武春さんは、テレビ番組の取材で知り合った。武春さんが、ヌキテパにやってきて、その料理について即興で浪曲を作って披露するという内容だったそうだ。

武春さんは、2002年ブロードウェイ・ミュージカル『太平洋序曲』でニューヨーカーたちの前で、ストーリーテラーとして浪曲をナレーション的に披露した。そのときアメリカ人から大喝采を集め、「なんでこんなにバカ受けするんだろう。そんならもう一度アメリカ、行ったろか」と思った、という。そして、文化庁の招待で2003年9月から1年間テネシー州に行き、文化交流をはかった。その時の経験は現在の三味線プレイ・スタイルにずいぶんと影響を与えているという。武春さんは、CDも数枚リリースしている。

圧巻だった最後の「ザ・忠臣蔵」は、この日はまだパート1くらい。この物語の続きがまだまだある。10年以上前、作ってやり始めた頃は、このパート1だけでももっともっと長かったという。それが徐々に無駄がそがれ、いい形になってきた。この日聞いた「ザ・忠臣蔵」は、実にうまくコンパクトにまとまっていたという印象を持った。「忠臣蔵に限らず、今の話でもそこに起承転結のあるドラマが三味線にいれこめれば、何でもできると思います」 確かに、浪曲師イコール・ストーリーテラー(語り部)である。そのメッセージの伝え方が、浪曲なのか、朗読なのか、落語なのか、歌を歌うということなのか、その違いだけだ。

浪曲と言っても、まさに今風のアレンジがなされ、武春さんの浪曲は浪曲のニューウエイブという感じだ。新しい日本の文化スタイルのひとつと言っていいだろう。アメリカでは、基本的には日本語で歌い、アメリカ人観客は外国語ミュージカルを見るように舞台の上部に出る字幕を読んで理解する。今度は、ひょっとして三味線プレイに英語でもうまく乗せてみたら、さらにバカ受けするかもしれない。あの「ブルース」ネタなど絶対にアメリカ受けする! 武春さんには、ぜひとも三味線のソウル(魂)をアメリカ人たちに教えて欲しい。

■国本武春さんオフィシャル・ウェッブ
http://homepage2.nifty.com/ts-sonic/

(2005年12月26日月曜、島津山レストラン・ヌキテパ=国本武春・ライヴ)

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投稿者 吉岡正晴 : 02:24 AM | コメント (2)