November 18, 2006Sam Moore With Surprising Finale: Sam, You Are So Beautiful【サム・ムーア、驚きと感動のフィナーレ】 感動。 生きる伝説、見事なソウル・サヴァイヴァー、歴史そのもの・・・。いくら言葉を探そうにも、完璧な言葉は見つからない。あまりに多くのものがありすぎて、超おなかいっぱいになったサム・ムーア・ライヴ最終日。 徐々に週前半の評判が効いて来たのか、この日は超満員で立ち見も出た。楽屋からステージまでの道のり、たくさんのファンに握手を求められ、かなり時間がかかっていた。バンドも熱ければ、観客も熱い。本人もかなりやる気いっぱいで、予定ではインストゥルメンタルだった「ホールド・オン」を途中から歌い出した。ドラマーのトニーによると、これはアレサ・フランクリンのヴァージョンだそうだ。 「ノック・オン・ウッド」の次に、セットリストでは「ソウル・シスター・・・」だったが、なぜか飛んで「カム・オン・カム・オーヴァー」へ。サムのよく通る甲高い声が、本当に素晴らしい。声も、マイクになんのエフェクトもつけず、素の声が会場を包み込む。そして、歌の「タメ」が、ものすごく見事だ。ここで歌い始めそうという瞬間から、さらに一歩タメてから、その歌詞を歌い始める。これは実に味わい深い。 ずば抜けてうまいというわけではない。しかし、その歌声には、味がある、渋さがある、艶がある、そしてクラース(品)がある。彼がそこに立って、ちょっと腕を動かすだけで、雰囲気と存在感があふれ出る。シンプルでストレートな歌だけに、聴くものの心に、ソウルに直球で語りかけてくるのだろう。彼の声を聴いていると、雰囲気も含めて、少しばかり日本のキングトーンズのリードシンガー、内田正人を思わせた。 観客にサビを歌わせる「ブレイム・イット・オン・ザ・レイン」では、日本人が2-3人歌った後、なんと、通路からステージに一人のブラックの女性が進んで行って手を挙げた。サムが彼女にマイクを手渡した。我らがブレンダ・ヴォーンだ!! ゴスペルっぽく、思い切りシャウトして歌うと、会場の空気が一挙に沸騰した。サムがそれを見て、あきれたように喜びを表した。 「アイ・キャント・ターン・ユー・ルーズ」のエンディングでは「ワン・モア・タイム??」と客を煽り、何度も終わりそうで終わらない。その度に客席は盛り上がっていく。こういったエンタテインメントは最高だ。70年の歴史だろう。 そして感動のバラード「サムシングス・ロング・ウィズ・マイ・ベイビー」。シンプルなバックに、切々と歌うサム。「俺のベイビーが出て行ってしまった。何が悪かったんだ・・・」とセリフを言うサム。曲のストーリー(物語)に立体感を与えるパフォーマンス。ここでのタメも、うならされてしまう。そして、泣かされる。ソウル、R&Bの真髄である。 会場が静まり返って歌が終わると万雷の拍手。そこに奥さんのジョイスが登場し説明を始めた。「30年前、一人の若者がサムの元にやってきました。その若者はその後大スターになりました。その彼が今夜、ここに来ています。みなさんへのサプライズ・ゲストです。キヨシロー!!」 客席から「おおおっ、ええええっ」という歓声があがる。ステージ左手からノーメークの忌野清志郎が現れた。そして、サムと一緒に「アイ・サンキュー」を歌ったのだ!! あの清志郎節だ。声も元気そう。「アイ・サンキュー」のところを、「ありがとう」にしたりして歌った。闘病中とは思えない雰囲気だった。1曲終えて、2人はステージ中央でハグ。観客は全員総立ちだ。 サムは言った。「昔彼が来た時、私の荷物を持って、あちこちに行ってくれたものなんだ」 当時無名だった忌野清志郎にとって、サム&デイヴはまさに神様に近い存在だっただろう。それがこうして何十年ぶりにステージ上で再会できるのは、彼にとってもものすごく嬉しいことだったに違いない。サム同様、清志郎も見事なソウル・サヴァイヴァーになって欲しい。 そして、サムは続けた。「まだショーは終わらないよ。もう一組のサプライズ・ゲストをみんなにご紹介しよう。ゴスペラーズ!!」 5人全員が客席からステージに上がった。そして始まったイントロは、「ソウル・マン」。総立ちの観客のヴォルテージはさらに上がる。ブルーノートの温度は一挙に5度は上がったに違いない。主として村上てつや、黒沢薫の2人が、「ソウル・マン」を歌い、そこにゴスペラーズのメンバーがコーラスをつける。もちろん、「ソウ~~ルマン」というところを、サムも歌う。この曲の部分は、メドレーになっていて、その間中、彼らはステージでサビを歌ったり、踊ったり、大パーティーになった。 ショーはまだ終わらない。前半、飛ばされていた「ソウル・シスター、ブラウン・シュガー」がここで披露された。なるほど、そういうことだったのか。もちろん、4ヶ月前、エナメル・ブラザースとして歌った黒沢薫とサム・ムーアのツートップだ。ところが、エナメルでは黒沢はサムのパートを歌っており、デイヴのパートは覚えていなかったので、かなり焦って歌詞を覚えたらしい。ステージに出て歌い始めるときには、彼は歌詞カードを手に持っていたのだが、歌い始めると、もう見ていなかった。「覚えてた」という。さすが、「飛び入り慣れ」している黒沢ならではだ。(笑) このデュオ、ソウルフルだったなあ。 大盛り上がりの「ソウル・シスター」で、ゴスペラーズのメンバーがステージを降りる頃には観客席は熱気で溢れかえっている。サムが話し始めた。「この4日間(本当は5日間だが、気にしない、気にしない)、ずっと、ビリー(・プレストン)がここ(会場)にいてくれたような気がします。本当に楽しい時間を過ごすことができました。ビリーに捧げます。ビリー、ユー・アー・ソー・ビューティフル・・・」 熱狂から静寂へ。淡々と歌うサムを600の瞳が凝視する。 You are so beautiful To me You're everything I hoped for "You Are So Beautiful" 何度も繰り返される「You are so beautiful(君は素晴らしい)」のフレーズ。サム・ムーアは、天国のビリー・プレストンに向かって歌う。同時に、そこにいる観客に向かって歌う。そして、観客は思う。サム、ユーアー・ソー・ビューティフル、と。(サム、あなたは素晴らしい) 歌い終えて、曲の最後でサムは言った。「Goodnight Billy, to me」 演奏が終わる頃には、再びスタンディングオヴェーションだ。そして、彼がステージから楽屋に戻るまで、皆に手を差し出され、もみくちゃにされ、長い時間がかかった。その間中も、拍手は鳴り止まなかった。 いやあ、よかった・・・。ため息がでた。1時間56分、火曜日より20分近く長くなっていた。僕も最後に立ち上がって長い間拍手を続けた。こんなに長い時間、手が痛くなるまで拍手をし続けたのは、本当に久しぶりだった。 ■ブルーノートウェッブ ■メンバー
show started 20:03 (2006年11月17日金曜、東京ブルーノート=サム・ムーア・ライヴ) |