April 13, 2005

Cutting Edge To Edge Of Cup: The Shot Of Soul, Another History Was Made

[ SPORTS>GOLF>]

「ザ・ショット」。

第69回ザ・マスターズ最終日4日目。優勝争いはクリス・ディマルコとタイガー・ウッズに絞られていた。

16番ホール、パー3。この時点でタイガーが1打リードでトップ。先に打ったディマルコは安全に確実にグリーンに乗せ、まずまずの位置。15フィートのバーディー・パットが残る。続いて打ったタイガー・ウッズのボールは打ち損じてグリーン奥に少しはずれる。微妙な高低さがあり、ひじょうに難しいパットが残る。せいぜい寄せればOK、なんとかパー狙いの位置だ。ディマルコがバーディーでウッズがパーなら並ぶという状況だ。最後まで勝負はわからない。

先にウッズが打つ。ウッズはグリーンに落したところからボールがピンに向かってうまく進んでいくことをイメージして、マークしやすいところに落ちてくれればいいと考えて打った。ボールはグリーンに乗って、右にカーヴし、一直線に旗に向かってゆっくりと転がっていった。観客の歓声が大きくなる。カップ寸前で、ボールが一瞬止まったかに思えた。そして、何かの神風が吹いたのか、その瞬間ホールからの引力が働いたのか、最後の一絞りか、ボールがカランとカップの中に吸い込まれた。まさにザ・マスターズの歴史に残るバーディーが決まった瞬間だ。長くこのショットは「ザ・ショット」として語り継がれることだろう。歓声が極度のピークに達した。

ラインとしては比較的いれやすい、入ってもおかしくないディマルコのバーディー・パット。ディマルコのボールは、しかし、次の一打でカップには吸い込まれなかった。パー。2ホールを残して、2打差に広がった。誰もが、タイガーの優勝を確信した、スーパーショットだった。

しかし、運命の女神はまだ迷っていた。続く17番と18番、タイガーが共にボギーを叩き、誰もが予想だにしなかったプレイオフにもつれ込むのだ。18番パー4、ディマルコが打った長い第3打(バーディー・パット)がカップに一直線に進む。歓声が一気に爆発する。ラインは完璧だ。が、最後の最後ボールはカップに蹴られてはいらない。その瞬間、ディマルコは膝を芝生に落した。もし、これがタイガーの16番のようにカップに吸い込まれていれば、ディマルコがグリーンジャケットを着ていたかもしれないのだ。

ディマルコは3日目の9ホールを、ダブルボギーでスタートし散々な目にあい、トップの座をタイガーに明渡した。4打リードが逆に3打離されてしまったのだ。そこで、彼は着ていたものを代えた。シャツ、ズボン、靴下、ベルトまですべてだ。

ディマルコは結局、この日(4日目のラウンド18ホール分)、68で回った。4日間を通して、もっとも安定していた選手だ。しかも、昨年に続いて最終日最終組で周った。さらに、2年連続のプレイオフ。18番を歩きながら、彼はキャディーに言った。「(この結果が)君にとっておもしろくなかったとしても、それはまったく君のせいではない。もう本当に胃はきりきりしていたよ。頭もおかしくなりそうだった。だが、それでも自分なりにいいパフォーマンスを見せられたのはとてもよかった」 一方ウッズはそんなディマルコのことを「彼は決してあきらめない。決して引き下がらない」と感じていた。

そして、18番に戻ってのプレイオフ。ディマルコはほんの20分ほど前と完璧に同様のショットを見せ、ヴィデオテープを再生したかと思われる所にボールを落す。一方、タイガーはピン奥、絶好のポジションだ。先に打つディマルコはパーセイヴが確実な寄せ。しっかり寄せて、先にいれて、タイガーを待つ。タイガーが慎重にカップの周囲を周る。5メートルほどのバーディーパットをいれれば、優勝だ。慎重に打ったタイガーのボールはまっすぐにカップに向かう。そして、すんなりとそこに吸い込まれた。

この日、彼らは前日(サードラウンド)の天候不良のため、3日目の半分、9ラウンドを行ってから、4日目の18ホール、計27ホールを回った。それは長い長い1日だった。

ディマルコは言った。「唯一の違いは、彼の16番はチップインが入り、僕のは18番で入らずに蹴られた、それだけだ。なぜそうなったのかはわからない。(僕の18番も)はいってもおかしくはなかった」 

表彰式になるとすでにあたりは暗くなり、夕闇が迫っていた。スポットライトを浴びながらタイガーはスピーチをした。「これは、父親のものだ。父は病気で具合がよくない。オーガスタまでやってきたが、ここ(フィールド)にはこれなかった。部屋でがんばっている。いつもここで優勝する時は父が僕を抱きしめてくれるが、今日は抱きしめてもらえない。早くうちに帰って彼に抱きしめてもらいたい。この優勝は父のものだ」 ウッズは唇をかみしめ、目が赤くなっていた。

16番のショットは、単なるショットではない。「ザ・ショット」だ。それは、タイガー・ウッズ、29歳の魂のショットになった。

(2005年4月10日日曜、アメリカ・ジョージア州オーガスタ=ザ・マスターズ最終日)

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投稿者 吉岡正晴 : 10:44 AM | コメント (0)